2022.12.25
【2022】 小規模事業者持続化補助金の「賃上げ枠」とは?

1.小規模事業者持続化補助金とは?

小規模事業者が販路開拓や業務効率化の為に使った経費の一部を国が補填してくれる補助金制度の一つです。採択されて補助金の交付を受けても再度申請することができるのが最大の利点です。原則として補助金を返還する必要はありません。小規模事業者持続化補助金自体は数年前から存在している補助金で、事業に必要なほとんどの経費を補助金がカバーしてくれるため、多くの事業者が活用しています。これらは毎年少しずつ内容や特別枠がマイナーチェンジされているので最新の情報かどうかに注意して確認しましょう。

2.2022年における小規模事業者持続化補助金の6つの枠

2022年における小規模事業者持続化補助金では、6つの枠が設けられています。

基本となる通常枠・5つの特別枠です。

①通常枠

②賃金引上げ枠

③卒業枠

④後継者支援枠

⑤創業枠

⑥インボイス枠

①通常枠

<販路開拓に取り組む小規模事業者向け>

販路開拓や、販路開拓の取組とあわせて行う業務効率化を目的

補助上限:50万円

補助率 :対象経費の2/3

さらに、一定条件を満たせば100万円を支給!

②賃金引上げ枠(賃上げ枠)

人件費を引き上げる取組みにより、補助上限額が通常枠の4倍に!!

※第8回公募から「賃金引上げ枠」の内容も変更されています。

賃金引上げ枠(賃上げ枠)とは、補助事業実施期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者に対して、補助率は3分の2のまま、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。赤字事業者がこれに採択された場合は補助率が4分の3に引き上がることになっています。

すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上を達成している場合であっても、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上とすることで要件を満たすことができます。

この枠が設けられている目的は、最低賃金の引き上げが行われた中、それに加えてさらなる賃上げを行い、従業員に成長の果実を分配する意欲的な小規模事業者に対し政策支援をすることです。

この要件を満たしていない事業者は、交付決定がなされていても補助金の交付はされないこととなっています。

販路開拓や、販路開拓の取組とあわせて行う業務効率化を目的

補助上限:50万円

補助率 :対象経費の2/3

さらに、一定条件を満たせば100万円を支給!

③卒業枠

卒業枠とは、補助事業実施期間中に常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者に対して、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。さらなる事業規模拡大に意欲的な小規模事業者に対して、政策支援をするために設けられています。

なお、小規模事業者として定義する従業員の枠を超える従業員数とは、業種に応じてそれぞれ次のとおりです。

  • 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):6人以上
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業:21人以上
  • 製造業その他:21人以上

補助上限:200万円

補助率 :2/3

④後継者支援枠

後継者支援枠とは、「通常枠」の条件を満たし、現事業主の跡継ぎ候補者が新たな取組みをすることが条件となります。中小企業庁が主催する「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者を対象に政策支援をするため、補助上限額を200万円へと引き上げる特別枠です。

アトツギ甲子園とは、「アトツギ」と称される全国各地の中小企業の後継者や後継者候補が新規事業のアイデアを競うピッチイベントです。(アトツギ甲子園についてhttps://atotsugi-koshien.go.jp/

補助上限額:200万円

補助率:2/3

 

⑤創業枠

創業枠とは、創業したばかりの事業者を重点的に政策支援するため、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者に対して設けられている特別枠です。2つの要件をいずれも満たす事業者を対象に、補助上限額が200万円へと引き上げられています。

補助上限額:200万円

補助率:2/3

 

⑥インボイス枠

インボイス枠とは、免税事業者が適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境変化に対応することに対して政策支援をするために設けられている特別枠です。

2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間に、一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書(インボイス)発行事業者に登録した事業者を対象に、補助上限額が100万円へと引き上げられています。

適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

補助上限額: 100万円

補助率:2/3

 

3.小規模事業者持続化補助金の「補助対象者」の要件

小規模事業者持続化補助金の補助対象者になるには次の要件があります。

  • 小規模事業者であること
    • 小規模事業者とは、常時使用する従業員の人数が、次の人数以下である事業者を指します。
      • 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):5人以下
      • サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
      • 製造業その他:20人以下
  • 日本国内に所在する事業者であること
    • 個人事業主の他、株式会社や合同会社、合名会社、税理士法人などの営利法人は要件を満たすものの以下事業者は小規模事業者持続化補助金の対象外になります。
      • 医師、歯科医師、助産師、医療法人
      • 統出荷による収入のみである個人農業者(個人の林業・水産業者についても同様)
      • 協同組合等の組合(企業組合・協業組合を除く)
      • 一般社団法人、公益社団法人、一般財団法人、公益財団法人
      • 宗教法人
      • 学校法人
      • 農事組合法人
      • 社会福祉法人
      • 申請時点で開業していない創業予定者
      • 任意団体 等
  • 大会社の100%子会社でないこと
    • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されていないことも要件です。
  • 確定申告をした直近過去3年分の課税所得が年平均額 15 億円を超えていないこと
  • 申請を予定している公募回の受付締切日の前10か月以内に、小規模事業者持続化補助金で採択されて、補助事業を実施した者でないこと

4.小規模事業者持続化補助金の「補助事業」の基本要件

小規模事業者持続化補助金は、申請をした「補助事業」に対して交付がなされます。原則として通常枠の他、賃上げ枠を含むすべての枠への申請で満たすべき要件があります。補助事業についての基本要件は、以下になります。

販路開拓等または業務効率化のための取り組みであること

      • 策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取組であること。
      • 販路開拓等の取組とあわせて行う、業務効率化(生産性向上)のための取り組みであること。
  • 商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
  • 地域の商工会や商工会議所へ「経営計画書」と「補助事業計画書」を提出して事業支援計画書の発行を受けること
  • 補助事業実施における助言などの支援を受けながら事業を実施すること
  • 一定の事業に該当しないこと
  • 対象外になる事業を行うものではないこと
      • 次の事業に一つでも該当する事業は、小規模事業者持続化補助金の対象外事業になります。
        • 同一内容の補助事業で国が助成する他の補助金や助成金などの制度で採択されている事業
        • 補助事業の終了後1年以内に売上げにつながることが見込めない事業(たとえば、機械を導入して試作品開発を行うのみであり、本事業の取り組みが直接販売の見込みにつながらない事業や、そもそも売上につながることが想定されていない事業)
        • 事業内容が射幸心をそそるおそれがあることや公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれがある事業など、公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの(たとえば、マージャン店、パチンコ店、ゲームセンター店、性風俗関連特殊営業など)
  • 共同申請は連携する全ての小規模事業者等が関与する事業であること
    • 小規模事業者持続化補助金は、複数の事業者で共同申請をすることができますが、共同申請の場合には、連携するすべての小規模事業者等が関与する事業であることが必要になります。

ただし、賃上げ枠の場合には、そもそも小規模事業者持続化補助金の共同申請を行うことはできません。

また、同一の補助事業内容で国の行う他の補助金を受け取る場合、小規模事業者持続化補助金を受け取ることはできません。小規模事業者持続化補助金と同一内容の補助事業で、他の補助金を受給または、受給を予定している事業者は注意が必要です。

5.小規模事業者持続化補助金を賃上げ枠で申請する場合の追加要件

賃上げ枠で小規模事業者持続化補助金を申請する場合には、共通要件の他、以下の要件も満たす必要があります。

事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とすること

賃上げ枠の追加要件は、補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とすることです。

ただし、すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である場合には、現在(当補助金申請の直近1ヶ月)支給している事業場内最低賃金より+30円以上とすることで、要件を満たすことができます。

なお、補助事業の終了時点でこの要件を満たせていない事業者は、たとえ交付決定後であっても、補助金の交付はされないことになっています。

6.小規模事業者持続化補助金(賃上げ枠)の申請から受給の流れ

小規模事業者持続化補助金を賃上げ枠で申請する場合、申請から受給までの流れは次のとおりです。

  1. 申請書類のの作成
  2. 商工会または商工会議所から事業支援計画書の交付を受ける

小規模事業者持続化補助金では、地域の商工会または商工会議所の支援を受けることが必須要件になります。必要書類を地域の商工会または商工会議所窓口に提出し、「事業支援計画書」の作成と交付を受けます。

  1. 補助金を申請する

小規模事業者持続化補助金の申請方法は、郵送もしくは電子申請です。電子申請の場合には、デジタル庁が管轄するGビズIDプライムアカウントが必要です。

  1. 採択か不採択かが通知される

   公募期間の終了後、応募事業者全員に対して、採択または不採択の結果が通知されま   す。採択案件については、補助事業者名や代表者名、補助事業名、事業概要、住所、   業種、補助金交付申請額などが公表されます。

  1. 助事業を実施する

   採択がされたら、まずは申請をした補助事業を実施します。この段階ではまだ補助金   は交付されていません。。

  1. 補助事業実施の実績報告をする

   補助事業を実施したら、事務局に対して事業の実績報告を行います。

  1. 補助金が交付される

   実績報告に問題がないと判断されれば、ようやく補助金が交付されます。

7.まとめ

小規模事業者持続化補助金は対象となる経費が幅広く、賃上げ枠など特別枠では補助上限額も引き上げられていますので、多くの小規模事業者にとって使い勝手の良い補助金です。

ただし、必要な書類は事業形態ごとに種類も異なる他、補助金の申請期間があり、制度内容、予定は変更する場合もあります。また、地域の商工会、商工会議所が発行する書類は時間を要する場合があるので十分な余裕をもって準備することが必要です。本業の業務を行いながら自社のみで補助金申請の準備をすることは、容易ではありません。補助金の申請は、専門家のサポートを受けて行うことをおすすめします。

まずはお気軽にお問い合わせください。