2022.12.02
小規模事業者持続化補助金、2023年はインボイス特例により上限50万円上乗せ

12月2日に成立した令和4年度第2次補正予算で令和5年(2023年)の補助金の方針が見えてきました。中小企業生産性革命推進事業に2,000 億円の予算が計上されました。

新型コロナや物価高、インボイス制度等の事業環境変化への対応に加え、GX・DXなどの成長分野へ の前向き投資や賃上げ、海外展開を促すため、生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者の 設備投資、IT導入、国内外の販路開拓、事業承継・引継ぎを補助し、切れ目なく継続的に、成長投 資の加速化と事業環境変化への対応を支援する事が発表されました。 

 小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)では、今回の補正予算で、2022年に引き続き、インボイス枠を拡充転換事業者への支援額上乗せが発表されています。

今回は持続化補助金の概要や変更点について、まとめました。

持続化補助金とは

中小企業生産性革命推進事業では、

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)」

「小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)」

「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」

「事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)」

の4つの事業が展開されます。

これらの事業を通じ、中小企業・小規模事業者の成長を下支えすること目指されます。

持続化補助金とインボイス

2023年10月1日、インボイス制度が開始されます。

インボイス制度とは「新しい仕入税額控除」の方式の事で、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。売上高が1,000万円以上の事業者(課税事業者)は対応が必須になります。そのため事前準備が必要です。

「適格請求書 (インボイス) 発行事業者」となり、インボイスを発行するためには国税庁への登録のほか、事務業務の変更や消費税納税手続きなどの作業に対応しなくてはなりません。原則として「適格請求書発行事業者の登録申請書」を2023年3月31日までに提出します。

持続化補助金ではこうした制度変更に伴う取り組みや、販路開拓のための経費の一部が、助成の対象になっています。

持続化補助金の目的

小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金) 小規模事業者が自ら経営計画を作成して取り組む販路開拓等を支援し、その経費の一部を補助するものです。小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としています。

【内容】

持続化補助金は次の6つの枠からなります。

①通常枠

②賃金引上げ枠

③卒業枠

④後継者支援枠

⑤創業枠

⑥インボイス枠

補助金額は50万円~200万円です。

策定した「経営計画」に基づいて実施する取り組みを支援しますが、公の秩序もしくは善良の風俗を害するおそれがある事業等は対象外になります。

補助金額

申請類型ごとの補助上限・補助率

補助上限 補助率
インボイス

転換事業者

上記以外の

事業者

通常枠 100万円 50万円 2/3
特別枠 賃金引上げ枠 250万円 200万円 2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者の場合3/4)
卒業枠
後継者支援枠
創業枠
インボイス枠 100万円

インボイス枠については今回の補正予算で変更がありました。

補助上限は申請類型ごとに50〜200万円ですが、事業者が免税事業者からインボイス発行事業者に転換した場合、一律50万円が補助上限に上乗せされます。これは2023年10月よりインボイス制度が導入されることを意識した変更です。

補助率

補助率はすべての枠で2/3です。

ただし、賃金引上げ枠のうち、赤字事業者の補助率は3/4になります。

対象経費

主な対象経費は次のものです。

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • ウェブサイト関連費
  • オンラインによる展示会等を含む展示会等出展費
  • 委託・外注費

 

具体的な例

対象経費 対象経費例
機械装置等費 高齢者・乳幼児連れ家族の集客力向上のための高齢者向け椅子・ベビーチェア 衛生向上や省スペース化のためのショーケース、生産販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫、新たなサービス提供のための製造・試作機械(特殊印刷プリンター、3Dプリンター含む)、販路開拓等のための特定業務用ソフトウェア、管理業務効率化のためのソフトウェア(クラウドサービス含む)
広告費 チラシ・カタログの外注や発送、新聞・雑誌等への商品・サービスの広告、看板作成・設置、試供品(販売用商品と明確に異なるものである場合のみ)、販促品(商品・サービスの宣伝広告が掲載されている場合のみ)、郵送によるDMの発送
ウェブサイト関連費 商品販売のためのウェブサイト作成や更新、インターネットを介したDMの発送、インターネット広告、バナー広告の実施、効果や作業内容が明確なウェブサイトのSEO対策、商品販売のための動画作成
展示会等出展費 展示会出展の出展料等に加えて、関連する運搬費
旅費 展示会への出展や、新商品生産のために必要な原材料調達の調査等に係る、宿泊施設への宿泊代
開発費 新製品・商品の試作開発用の原材料の購入、新たな包装パッケージに係るデザイン費用
資料購入費 取得単価(税込)が10万円未満のもの
設備処分費 既存事業において使用していた設備機器等の解体・処分費用
委託・外注費 インボイス制度対応のための取引先の維持・拡大に向けた専門家(税理士、公認会計士、中小企業診断士等)への相談費用

 

持続化補助金の主な要件

各枠の補助対象となる主な要件は、次のとおりです。※現在(第10回時点)

  • 賃金引上枠:事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者
  • 卒業枠:小規模事業者として定義する従業員数を超えて規模を拡大する事業者
  • 後継者支援枠:アトツギ甲子園のファイナリスト等となった事業者
  • 創業枠:過去3年以内に「特定創業支援事業」による支援を受け創業した事業者
  • インボイス枠:免税事業者のうちインボイス発行登録をした事業者 (令和4年度第2次補正予算執行を持って、インボイス枠は終了)

持続化補助金 令和4年度補正予算の概要

補正予算では、「インボイス特例」が盛り込まれました。それに伴い「インボイス枠」は廃止となります。(※2023年2月までは、現行のインボイス枠を継続予定です)

今後の変更点について、詳しく確認していきましょう。

インボイス特例により上限50万円上乗せ

インボイス特例とは免税事業者からインボイス発行事業に転換する「インボイス転換事業者」が持続化補助金を申請する場合、すべての枠で補助上限が50万円の上乗せとなります。これにより、インボイス転換事業者の補助金額は最大で250万円となりました。

対象経費には税理士への相談費用も含まれます。

※令和元年度および3年度補正予算事業において「インボイス枠」で採択された事業者は、令和4年度第2次補正予算の「インボイス特例」の対象外です。

持続化補助金活用のメリット

日本国内の企業のうち、99%以上が中小企業です。経済産業省が発表した「2022年版中小企業白書・小規模企業白書」では、新型コロナウイルス流行や原油・原材料価格の高騰などの影響を受け、中小企業等の経営状況は引き続き厳しい状況にあることが報告されています。

また人材不足や働き方の多様化から、生活様式の変化への対応や業務効率の改善は急務となっています。さらに2023年10月から始まるインボイス制度は、免税業者からのインボイス事業者への転換に伴うシステム導入などの負担も引き起こしています。

新しい時代の流れに対応するためには、新しい業務体制への変革が不可欠です。とはいえ、厳しい業務状況が続く現状では、予算的課題解決できずにいる中小企業も少なくありません。

そんなときには、ぜひ持続化補助金を活用してください。返還義務のない補助金の活用は、新しいニーズに応える業務変革のための大きな助けとなるはずです。

まとめ

ウィズコロナの時代へと移り変わりゆく中で、企業にも変革が求められています。新しい制度や社会的ニーズに応えるためには、予算的な体力が必要です。

持続化補助金を上手に利用し、できうる限り負担の少ない業務改革を目指すことは、経済の回復も早めます。大きく変わろうとする時代の流れを乗り切るために、支援事業を積極的に活用していきましょう。